パティスリーに、新しい空気を。

中崎町にオープンした「hannoc -cake,cafe-」。

ネーミングとコンセプトづくりを、parksがお手伝いさせていただきました。

このお店には、シェフがいません。
ホテルや有名パティスリーで腕をみがいてきた20代のパティシエたちが集まり、
それぞれの個性を生かして、自由にお菓子をつくりあげるという新しい空間です。

ガラス張りの開放的なキッチンで、パティシエたちがケーキや焼き菓子をつくり
お客さまはそのすぐ目の前のカウンターで、おいしいひとときを楽しんでいます。

もっと新しいのは、
パティシエたちがお菓子づくりの合間にそこから出てきて、
みずからお客様との対話をかさねていくということ。

これまでのパティスリーでは
きびしい上下関係のもと、閉じた空間で黙々とケーキをつくり
パティシエがお客さまの笑顔を見ることのない環境があたりまえだったそうです。

かぎりない可能性をもつ若いパティシエたちが、自信作のおいしさを
自分のことばでお客さまに伝える。
そんな新しい”空気”を、この場所につくっていきたい。

お話を聞かせてもらうなかで印象的だった
“空気”ということばを軸に、ネーミングを探っていきました。

そして、でてきた「hannoc」という名前は
空気を構成する窒素(N)、酸素(O2)、アルゴン(Ar)、
二酸化炭素(CO2)水蒸気(H2O)ネオン(Ne)の元素記号の頭文字を抽出したことばです。

いろんなものが混ざり合ってできる空気のように、
いろんなパティシエやお客さまが集まって、この場所を新しい空気で満たしていけたら
という想いを込めました。

オープン初日、お店の前にできていた行列をたどると、
そこには「hanocc」の看板が。

この場所にかかわる人、みんなによろこんでもらえるように
たくさん考えたなかでできた「hannoc」ということばが

デザイナーさんの想いも重なってロゴになり、
それが看板になって、どしんと中崎町に空間が生まれて、
今ではもう、いろんな人にふれてもらえる名前になったんだと
あらためて実感しました。

わくわくしながら順番を待って中に入ると
「いらっしゃいませ」という決まりきった挨拶ではなく、
「こんにちは!」と親しみのこめられた元気な声が聞こえてきて

ケーキやコーヒーを味わうお客さまをガラス越しに見ながら、
パティシエたちが本当に楽しそうにお菓子をつくっていて。

そんな新しい空気がお店いっぱいに満ちていることに
とても、うれしくなりました。

(樫原 明日香)

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